韓国のソウルと香港への商談は先方の都合で延期になった。出発のギリギリでの延期でホテルのキャンセル代は先方が支払ってくれるらしい。旅行保険に入っているから、キャンセル料は保険からも支払われることになる。時間が出来たので、春江を実家に連れて行く事にした。
春江を実家に連れて行く。駅を降りてから実家に直行する前に母が事前に会いたがっていた。駅に迎えに来た母は春江を見た瞬間「はじめまして。将都の母でございます」と挨拶した。車の中で父がゴルフに行っていて帰りが夕方になると聞かされた。
これが親父の悪いところだよ。まずもって、ゴルフが最優先なんだよね。自宅について応接間に座った。一般家庭には応接間は必要ないのだけどね。祖父の仕事は政治家だったから、その名残で応接間がある。
しばらくして、母が「ケーキ注文して来たのだけどとって来て」と言うから俺がお使いに行く事になる。つまり、これが母の戦略だ。春江の面接を事前にする事になる。
往復25分だった。ケーキを持て帰ってくると母と春江は笑いながら話していた。たった25分で春江は母を攻略していてた。
「正直言って10歳年上の女性と結婚すると言うからどんな人かしらと思ったけど、素晴らしい人を見つけたわね」
この一言で、決まった。父親は母の奴隷だ。母には絶対に叶わない。過去の女性問題も母が乗り込んで解決してきたし完璧に弱みを握っているから母は、我が家の女王陛下なのだ。
ケーキは俺が好きなイチゴのショートケーキとモンブランなどこんなに買う必要があったのかと思うくらいだった。いつも、お客様がくるときにはオーダーしているのだ。フランス、イタリアで金賞を受賞したパティシエのケーキが大好きなんだ。
春江も母に色々と質問していた。母との会話が弾み母が昼ごはんを作る事になった。その作り方を見ていた春江は、そこでも恐るべき才能を発揮した。母が作る料理の癖を見事に見抜いた。
色々と話をして母は、春江のことを根ほり葉堀り聞いている。
父が帰ってきた。
ゴルフに行かせたのは母だ。
父との話も弾み、夕食となった。
その時、母はこう言った
「夕食も私の料理でいいかしら」
「お手伝いしましょうか?」
母はこの言葉を待っていた。春江は手伝っていたが、ほぼ春江が作った。
そして、食べた父が唸った。
「素晴らしい料理だ」
母はかなりのショックだ。
完璧に盗まれている。味付けをね。
春江と両親はかなり距離が近くなった感じがする。
そして、父は春江が作った料理を食べて絶句する。
味は母の味そのものだった。
何も問題なく結婚が承認された。
築地買ってきたマグロをさばいた。
丸山で海苔も買って来た。
マグロと海苔で手巻きすしを作る。
これが絶品のうまさで晩餐は盛り上がったのだ。
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