家に帰ってから彼女は笑いながら「なんであんな生娘にムキになったのかな」と言い出した。「生理のなせる技でしょ」と言ったら「そうかもね」と笑っている。大学の友からは「部屋掃除してるよ」とラインが入るのだ。本当にやる気なんだろうか?
そして、食材を買って友の家に向かった。
料理を教えるというか技のご披露になった。メニューはニース風サラダとカルボナーラにステーキ。
一見誰がやってもできる料理だ。
俺の彼女が教えて、安達の連れが料理するが最初からストップ状態だった。
包丁を使ったことがないことは明らかだ。
野菜のちぎりかたもわかっていない。
俺の彼女が手際よくやってみせる。
その間はギャラリーとして、友とビール片手に見物だ。
ニース風サラダとはゆで玉子とアンチョビとシーザーサラダドレッシングだ。
このドレッシングを手作りするのだ。
アンチョビをいれたサラダドレッシングは作るのが面倒だけどね。
カルボナーラは卵の黄身だけを使うミラノ風にした。
パスタに塩は少なめに茹でる。チーズの塩気を使うから
パスタを茹でる時に塩を多めにするとやばいことになる。
スーパーの肉も美味しく焼ける。オージービーフの安いステーキ肉だって
ホークでさして筋をきり、塩胡椒して焼く準備をする。
塩胡椒をしてから7分間冷蔵庫で寝かせる。
オリーブオイルをフライパンにひきガーリックの風味を移してから肉を焼く。
サラダ完成。カルボナーラを作りながら、同時に肉をやく。
この2つのことを同時にできるかどうかが鍵になる。
出来上がった。
友が「うまい」と叫ぶ。ドンクのバケットを添えれば完璧だよ。
「どうして、スーパーの肉がこんなにうまくなのかな」と不思議そうだ。
「料理とは技なんだよ。誰でも真似ができる技だよ」
そう俺の彼女が言えば、友の連れは静かに黙って食べているかと思えば涙を流していた。
「どうしたの」
「料理の技を勉強しないとお嫁に行けないかもしれない」
「確実に捨てられる女の条件だよね。料理ができませんはやばいよ」
「どうしたら、うまくなりますか」
「毎日、作ることだよ。簡単な料理ほど手抜きができないよ」
「何を作ればいいですかね」
「この本を差し上げましょうかね」
俺の彼女は二人分のレシピが書いてある料理ブックを6冊出した。
そこにあるのは定番の家庭料理だ。
「これが全部できればいいさ」
食べ終わって、安達の彼女候補が持ってきた料理を食べた。
「美味しいじゃない」
「母が作った料理です」とこたえたから俺の彼女は小さく爆発。
「お母さんに教えてもらいなさい」
「何回も教えてもらったけど再現ができないのです」
持ってきた料理は鯖の味噌煮だ。
「お母さんは仙台の人?」
「そうです。どうしてわかりましたか?」
「この味噌は仙台味噌だね。しかも、盛岡の山岸にある味噌屋だね」
「え?そうです。どうして、わかったのですか」
「あの味噌屋は小さな米屋だけど、味噌がうまいのだよ。うちも使っている」
え?そうなの?うちの味噌は盛岡の味噌なんだ。と初めて知った。一斗缶に入っている味噌は盛岡の味噌だったのか。
それから、料理を食べ終わって俺の彼女は宿題を出した。
「今日の料理を明日着くなさい。作り方はわかったよね。頑張るのよ。できるから」
そういって、俺と二人は家路についた。
「あのさ、あの子できるかな」
「多分、無理だね。料理ができない女は確実に捨てられる。捨てられる女の特徴は、剛毛、料理ができない、裾ワキガとプライドだけが高い女と決まってる」
「裾ワキガ?」
「そうよ。下着脱がして強烈な悪臭が漂ったら、息子も萎えるでしょ」
俺もそう思った。
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